#1 新学期とは浮かれるものなのか

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春といえば出会いの季節。

    俺たち高校生からすれば、クラス替えにより新たに知り合う学友との出会い。入学してくる新入生との出会い。新たな教師との出会い。

   それ故に大半の学生はこの時期は浮足立っている。そう。俺の横にいる親友も例外ではなかった。

「雫!雫!今日からようやく3年生だな!最上級生だな!」

    俺の横で無邪気にはしゃいでいるのは”奏 響也(かなで きょうや)”。俺”音坂 雫(おとさか しずく)”の数少ない友人だ。

「おい雫!聞いてるのかよ!?」

「聞いてる。反応してないだけだよ。第一、3年になることの何がそんなにうれしいんだよ?」

「何だかんだ反応してるあたり、雫兄ってやっぱり優しいよね。あんな子供みたいなお兄ちゃんに反応してあげるなんてほんとに優しい。」

「子供の相手をするのも、たまには楽しいしな」

「おいこら緋咲!兄に対してなんて言い草だ!雫も!誰が子供だって!?」

「「響也・お兄ちゃん」」

    響也と俺の後ろからポツリと呟いたのが響也の妹の”奏 緋咲(かなで ひさぎ)”。

    学年は俺と響也の1つ下である。両親が早くに他界し響也と2人暮らしをしている。兄をダメ人間にしてはいけないという精神から響也の妹ではなく姉ではないのか?という立ち振る舞いが見受けられる。

    まぁおかげで響也の家事スキルは完璧になっていたな。

「あ、雫。これ今日の分。」

というと包を俺に渡してきた。

「いつも悪いな。ありがとう」

「どうせ俺と緋咲の分作ってるしな。2人分増えようが構いはしないさ。材料費は貰ってるわけだし。」

「は~い。こっちは霞の分。」

    緋咲が、俺の学ランの裾を掴みながら歩いている白髪の女の子に、響也が俺に渡した包より一回り小さい包を渡した。

「ん。緋咲ありがとう。ついでに響也も。」

「作ったの俺ですけど!?」

    この響也の扱いがわかっている女の子は俺の妹の”音坂 霞(おとさか かすみ)”である。

    学年は緋咲と同じだが年齢は俺の3つ下である。義務教育はもういいと飛び級で去年ウチの高校に入学してきた。

    本当は俺と響也が入るタイミングで入学しようとしたが緋咲がいたため、緋咲が入学する去年に合わせたらしい。

    高校入学時期ってそんな自由に選べたか些か疑問はあったが、霞のことだから上手く纏めたのだろう。

「今日の弁当は何となく中華にしたわ。霞と緋咲の分は一応甘めにしてるから、もし口に合わなかったら言ってくれ。次からそっちに合わせるから。雫もな。」

「‥‥ありがとう。(こいつは4人分を4人それぞれの味付けで作ってるのか?)」

    そう。先程響也と緋咲が渡してくれたのは弁当である。なぜ響也が俺と霞の分まで作ってくれるのかというと、俺と霞も2人暮らしだからである。

    父親が病死したあと、無理をして生活を支えていた母が霞を産んでしばらくして他界した。父親が残した最後の贈り物だと言い無理して霞を産んだのだと後に聞いた。霞を産まないで生きるという選択肢もあっただろうに。

    でも俺は霞を産んでくれた母と霞を残してくれた父に今でも感謝し、その姿勢を尊敬している。

    ということで家事スキルが平凡な俺と霞を見かねて響也が作ってくれているというわけだ。もちろん材料費は響也と緋咲の分も合わせて俺が出している。響也は俺と霞の分だけでいいと言ってくれたが、流石に毎日作ってもらうのにそれは申し訳ないので響也と緋咲の材料費も渡している。

「お?校門のところであいつ待ってるぜ。一緒にクラス分けを見ようってことか?」

    響也の言葉を聞き校門の方を見てみると、いかにもボーイッシュな茶髪で短髪の女子が腕組みをしている。 

「遅い!!!!」

   その女子は雫に気づくと睨みつけながらそう叫んだ。

いったい彼女は‥‥‥

続く